はじめに
今回は、学童保育(放課後児童クラブ)と放課後等デイサービス(放デイ)の違いについて、現在学童保育でご活躍されているsunさんをゲストにお迎えして記事を書いていきたいと思います。
sunさんはTwitterを通じて、学童、放デイ、保育園に勤務する方がお話しできるLINEオープンチャットの主催者でもあります。以下に紹介しますので、ご興味があれば是非参加してみてくださいね。
本記事は学童保育(放課後児童クラブ)と放課後等デイサービス(放デイ)ってなんだろう?というところを、現場目線でわかりやすく書いていきたいと思います。
二つの事業の違いや、現在どちらかに興味を持っている方は、最後まで読んでみてください!
学童・放デイってどんなところだろう?
まずは、お互いの事業について概要を説明したいと思います
まずは学童保育(正式名称は放課後児童クラブ)からご説明します
法律では放課後児童健全育成事業というのですが、放課後、お家に保護者の方がお仕事や様々な事情でおられない場合に、安全に遊んだり生活したりできる場を提供する事業です。言わば「放課後の家庭」だと思っています。子ども達が下校して学童に来るときには、「おかえり」と言葉をかけます。
対象者や職員さんはどんな人がいますか?
利用しているのは小学生です。1~6年生まで対象ですが、お留守番の難しい3年生までが多いですね。条件としては保護者の方がお仕事をされていること。何らかの事情で放課後にお家での保育ができない場合も利用されています。
職員資格は、保育士、社会福祉士等であって都道府県での研修を修了し、放課後児童支援員となった者を支援単位ごとに1名以上配置する必要があります。放課後児童支援員という資格は2015年に創設されましたが、それまでは勤務に関して特に決まった資格要件などなかったこともあり、ようやくの基準となりましたが、2020年に入って要件をゆるめられています。
私の働いているところでは元学校の先生とか元保育士さんが多い印象です。厚労省の調査でも半数以上が教員か保育士の免許を持って働いているようですね。
ほとんどが臨時や嘱託、パート等の非正規職員なのは大きな問題だなと思っています。
定員や利用料はありますか?
おおむね集団は40人以下となってますが、令和元年で46人以上の集団が約27%を占めてます。定員は自治体やスペースの広さで色々ですね。
利用料も自治体によって本当にそれぞれです。学童は運営されているところが本当に色々で、公営もあれば民間企業や保護者の方が運営されているパターンもあるし、場所によって本当に変わります。大体は8000円に、おやつ代等の実費が2000円で、月に計1万円くらいかかるところが多いのかなと思います。
日々の活動内容を教えてください!
子ども達が主体的に過ごせるような援助が主ですね。主体的に、とは言っても子ども達は何もしなくてもいいんです。いつもじゃないですけど「疲れた」って言って寝ている子もいたりします(笑)
逆にこれやりたい!が見つかったら全力でできるように応援したり、一緒にやったり。巨大なダンボール工作だったり砂場で大きな山を作ったり。子ども達のした選択を尊重できるような場でありたいなと思っています。
ただ忙しい保護者の方が多いですし学童外の子ども達より帰宅も遅いので…宿題もさせますね。学童は内容については教えないとしているところが多いようですが、とはいっても目の前で困っていたら教えてしまいますね。宿題ばかりになっても…とバランスはいつもジレンマです。
やりがいはどんなところにありますか?
子ども達の、「やらなきゃいけない」じゃなくて「やりたい」を応援できるところでしょうか。一見大人には無駄な事のように見える物もありますが、本当に満足そうな表情で「楽しかった」「またやろう」と声をかけてくれる時はこの自由な遊びの時間が子どもにとって必要であることを痛感します。
学童ならではの異年齢の集団生活も魅力です。揉め事の時等は力の差や発達の差があり過ぎて難しさを感じますが、お互いを分断しないように、また支援員の思いを押し付けずそれぞれの子ども達の思いを掬い上げるように関わりのサポートを心がけています。
後日子ども達同士で解決策を見つけたり、譲歩したりする様子が見られた時には嬉しいですね。
次は放課後等デイサービスです!
放課後等デイサービスは、児童福祉法に定められた『障害児の通所施設』となっています。『放課後等』とあることから、主に学校が終わったあとの放課後を過ごす場所となっています。そして、夏休みなどの長期休暇時にも通うことができる場所です。
この放課後等デイサービスは『障害福祉サービス』と呼ばれているもので、サービスの利用者として契約を結ぶ必要があります。そして、その契約には自治体が発行する『受給者証』というものが必要です。
受給者証を発行し、サービスを利用したい場合は、地域の相談支援事業所の相談員にサービスを利用するための計画を書いてもらう必要があります。(または、セルフプランと言って、ご家族が計画を立てることも認められています)
イメージが沸きにくい部分ですが、高齢者の介護保険のシステムとほぼ同様です。
どんなこども達が通っていますか?またどんな職員さんがおられますか?
放課後等デイサービスは、小学生から高校生まで、幅広く通っています。知的・発達に遅れのあるお子さんもおられますし、身体・医療的なケアが必要なお子さんもいます。
職員は、基準となる職員としては児童指導員、保育士、そして障害福祉サービス経験者とされています。それ以外にも、看護師など配置されるケースもあります。
障害福祉サービスということで、サービス管理責任者(放課後等デイサービスの場合は児童発達支援管理責任者)が必置ということが大きな特徴だと思います。
定員や利用料はありますか?
多くの事業所は、10名定員の比較的小規模な集団となります。10名に対して2人の職員が基準とされていますが、実際それでは足りないところが多いと思われます。
利用料に関しては、おやつ代や施設利用料として各事業所が定める実費がありますが、サービスの利用料としては世帯によって0円、4,600円、37,200円の上限が定められています。多くの世帯が一か月の上限金額が4,600円となる印象です。つまり、どんなにサービスを使っても、上限が4,600円のご家庭はそれ以上かからないということになります。
これは、障害福祉サービスの総費用の一割を利用者は負担するという原理です。ざっくりですが、一回当たりの利用は9,000円~12,000円が総費用となりますから、それの一割が利用者負担です。
どんな活動をしていますか?
放課後等デイサービスは、『療育』を提供する施設となっていますから、療育を軸にした活動をすることになります。その療育は幅が広く、生活の支援を重視するところから学習を支援するものまであります。
『~をすれば療育!』というものがないので、個々の事業所のカラーが出るところです。
その療育ですが、先に出てきた児童発達支援管理責任者が作成する『個別支援計画』に則って行われます。個別支援計画は、具体的な支援方法や方針を示すもので、半年に一度見直し、その支援の妥当性を検討します。
“療育”って具体的にどのようにされているか教えていただけませんか?
言葉としては、『医療』と『教育』から半分取ったものが『療育』となっています。定義としては非常に難しいところですが、放課後等デイサービスでは個人が目標とする事、例えば『身だしなみを整える』ことに関して、その支援方法を本人、家庭と一緒に考えていくということになります。その支援方法の中に、声かけの工夫や視覚で訴えること、その他本人に合わせた方法を考えて実践する過程が療育と言えると私は考えています。
併せて、集団の中に入ったとき、どのように適応するかということも重要な要素です。今は小さな子どもたちかもしれませんが、社会人になったとき、そしてもっと異なる大きな集団に入ったとき、そのときに困らないような支援をしていきます。それは、他者との距離感だったり、声の大きさやトーンだったり、個々のお子さんによって異なる部分となります。
しかし、何かを足りないと思われる部分を矯正したりする視点は療育ではないので、関わる我々も日々悩みながら行っているところです。本人の発達段階、そしてご家庭の方針、学校での学び、それらをバランスよく考えて、『療育』の提供を考えていかなければなりません。
ずばり、やりがいは?
放課後等デイサービスは、様々な特徴のあるお子さんが通う施設です。『障害福祉サービス』という位置づけなので、障害のあるお子さんが通うことになりますが、そのお子さんの能力によって障害の軽い重いが決まっているとは思いません。
結論から言うと、人も含めた環境調整で、その本人の個性がどう輝くか決まるということです。
ですので、私は本人にぴったりあった環境が見つかった瞬間、その本人の顔がパッと華やいだ時に何とも言えない嬉しさを覚えます。そんな場面をたくさん見たいと思いながら、日々の支援をしています。
絶え間ない工夫と、本人への理解を深めていくことが必要不可欠です。
最近の動向は何かありますか?
平成27年に放課後等デイサービスガイドラインというものが厚生労働省から示されました。これを発端に、報酬や人員基準、開所要件もだんだんに厳しくなって来たように感じます。
個人的には、次の改正時にもっと厳しい職員の資格要件が課されると思っています。ガイドライン交付時にもありましたが、『預かりではなく療育の提供をすること』とあったように、増えすぎた放課後等デイサービスを規制するような動きもあります。
質の確保という言葉もよく出されます。質に関しては、それが療育の提供方法ではないと思いつつも、意識せざると得ないところです。
令和2年現在、放課後等デイサービスは制度としてまだ10年経っていません。まだまだ、変化の時期が続きそうです。
お互いの事業への想い
放デイから学童へ
放課後や長期休暇時の対応など、共通する点が多く参考になります。私の子どもも学童にお世話になっていました。夏休みは朝早くから遅くまで…大好きな先生もたくさんおられ、学校のイベント時にもたくさん声をかけてもらいました。
さて、支援級のお子さんも学童に通うこともあるかと思いますが、放課後等デイサービスを選択される方もいます。こんなとき、上手く連携できたらなぁと思います。同じ児童の放課後支援をする者同士、できることがまだありそうな感じがします。
私としては、障害の有無に関わらず、放課後支援が必要な子どもが気軽に集まれる場所があったらいいな…と夢想しています。(ケニー)
学童から放デイへ
恥ずかしながら放課後等デイサービスが何をされているのか、これまで詳しく知らず、お話しをお伺い出来てよかったです。
実際に働いている学童でも支援級のお子さんが日によっては放課後等デイサービスを利用していますし、連携できれば学童での生活もそんなお子さんに今より過ごしやすいように工夫できそうですよね。
学童保育は年々利用児童数が増え続けていることもあり、個人の支援としては弱いところもあると感じています。時間的に難しいところもあるのですが、困り感を抱えている児童も増え続けている今、もっと細やかな支援ができるように放課後等デイサービスから学べることがたくさんあると思います。(sun)
まとめ~共通点と違い~
学童と放課後等デイサービスに関して、以下のようなことがわかりました。
共通点
・児童の放課後の居場所を確保している
異なる点
・対象年齢
学童は、小学校の間で、小3までが多い
放課後等デイサービスは、小学生から高校生まで
・通所に関しての条件
学童は…
①親が働いていること
②放課後、家にいられない状況があること
放課後等デイサービスは…
①障害福祉サービス受給者証が必要
②利用の理由に関して、本人に療育が必要かどうか
・児童に対する支援について
学童は、それを『保育』と呼んでいる
放課後等デイサービスは、それを『療育』と呼んでいる
・支援にあたっての計画
学童は場所によって様々と思いますが、特に定めのある計画はありません。sunさんのお勤めの場所では、クラス全体に対する行事計画や困り感のある児童に対する支援計画などがありますが、全員個別に行き届いていない現状とのことです。
放課後等デイサービスは一人ひとり『個別支援計画』というものがあります。児童発達支援管理責任者が作成する、個々の児童に対しての療育計画です。
これらの違いに関しては、今後別の記事で詳しく触れていきたいと思います。
ありがとうございました!今回協力してくださったsunさんとは、以下の記事も一緒に仕上げておりますので、ご紹介いたします。