今回は、質問が来たのでそれを題材に記事を書きます。質問してくださった方には許可を得ています。したがって、質問の答えを、このブログで回答する形にしますね。
質問内容
介護の仕事をしています。現在3年目ですが、同じ職場の人が何かと高圧的に接してくるため困っています。ただ高圧的なだけなら我慢できるのですが、二言目には『自分は介護福祉士だから大体のことはわかっている。資格がなくて仕事をすることに不安はないのか』と言ってきます。これは、資格マウントというものですか?正直、あまり気持ちの良いものではありませんし、対処に困っています。
※質問は、内容を大きく損なわない程度に私が手を加えています。
この質問に関して、考えていくわ!
資格マウントとは?
この文言自体Twitterなどで目にしたことはありますが、私はあまり深く考えたことがありませんでした。ご質問いただき、『そういえば、あのときのあれはそうだったのかな?』と思い返したりしましたが…。
一般的には、『福祉の有資格者が無資格者のことを下に見て、高圧的に接したり自分のことを優位に立たせるような言動をすること』と解釈しています。このようなことが日常的にあると、職場内の人間関係が悪くなってしまいそうですね。
そう、そういえば私も似たようなことを言われたことがあります。仕事を始めた頃、仕事で関わりのあった人に資格の有無を問われ、当時所持していたヘルパー2級であることを告げるとその人は一言、『ヘル2だと不十分だよね。やっぱ突き詰めるなら介護福祉士くらいなきゃね』と言われたことがあります。
当時はなんだか不愉快だなぁと感じたくらいで、やはり深く考えなかったのですが、いわゆる『資格マウントを取られた』という状態だったのでしょう。少なくとも、その人にとっては。
つまり、私はそれ以上の気持ちは持たなかったので、正確に言うとその人は『マウントを取った』わけではないのですが…。要は、取った、取られたのは当人同士の気持ち次第でしょう。気にしないのが一番です。
もし可能であれば、その職場で『独り勝ち』できることを見つけてみてもいいかもしれません。そうすると、日々の仕事にも自信が湧きますし、『自分ならではの立ち位置』が見つかると思います。
併せて、資格を取ることは、それはそれで重要な一面を持ち合わせています。以下の記事をご紹介しますので、ご覧ください。
ご質問への回答は、これにて終了とします!
以下のセンテンスで、もう少し深く考えていきますね。もうしばらく、お付き合いくださいね。
現場でのマウントを紐解く
今回は資格に関してのマウントを話題にしましたが、このマウントは資格以外にも存在することに気が付きました。
例えば、経験もそうでしょう。未経験の人に対して、『自分は○○年福祉の仕事をしている!』もマウントと言えそうです。他にも、年齢もあり得ると思います。
例えば、『若い人にはわからないだろうけど…』などと口に出してしまう職員もいるのではないでしょうか。
しかし、これはある一方の立場から考えただけなので、当然逆もマウントになるのではないかと思います。経験であれば、『経験ばかり積んで、視野が狭くなっている』という考え方や、年齢に関して相手を中傷するような場合です。
もちろん、資格に関してもありえます。資格マウントは有資格者が無資格者を下に見ることですが、無資格者が有資格者を下に見ることもありえます。
つまり、『あんな資格取ったって意味ないのに』という意見や、『無資格だって仕事ができる』などという発言です。
こうしてみると、マウントとはお互いにそうなり得てしまう場面があるということですね。
なんだか、それはそれでさみしい気持ちになります。それでは、なぜそのようなことが起こるのでしょうか。
なぜマウントが起きてしまうのか?
上記のようなマウント状況はなぜ起こり得るのか、まずはその職員の性質と言う部分を指しい引いて、考えてみましょう。
まず一つに、福祉の仕事の中での評価は、営業成績や売り上げとは違い、個々の職員がはじき出す数字が出てこない(訪問系は一人当たりの収益としてでますが、この収益は職員個々の評価とは厳密には言えないので)ため、評価がしにくいという部分があると思います。
評価がしにくいということは、他の職員と差別化することが難しいということになるので、資格やその他の要素で、自分との差別化をしようとする職員が出てきてしまう要因となると思います。
それは、仕事へのやりがいや賃金、その他のその職員の性質なども影響すると思います。
もう一つは、福祉業自体の門戸が広く、いろいろな背景の職員がいることです。それ自体は悪いことではなく、むしろいろんな可能性を秘めている部分なのですが、だからこそマウント状況を作り上げてしまう要素にもなり得るのです。
例えば、全職員が介護福祉士の職場(つまり、介護福祉士でないと介護の仕事ができないとなった場合)であれば資格マウントは起こらないでしょう。しかし、介護の仕事も障害福祉分野も、ほぼ無資格からキャリアを積むことが可能な業界です。
逆に、全員無資格の職員の施設では、先に述べた『資格なんて意味ないし、なくてもできるから』という無資格マウントも起こり得ないと思います。
最後に、ときに経験が重要視されてしまう傾向にあることが挙げられます。障害福祉サービスに関しては、サービス管理責任者や児童発達支援管理責任者、または相談支援専門員になるために、福祉の資格的には無資格でも良いのですが、そのぶん実務経験が必要になります。
この経験を重んじる傾向から、経験の少なく有資格者は経験豊富で無資格の職員に対して、経験豊富で無資格者は経験の少ない有資格職員に対して、それぞれに対して自分の優位性を誇示してしまうのだと思います。本来であれば、どちらも兼ね備えるのが望ましい部分だと私は思います。
さらに、どちらも兼ね備えている有資格者で経験豊富な職員は、その施設で満足な立場が与えられていないと本人が思っている場合、他の職員に対して資格や経験でマウントを取る場合がある、と考えられるでしょう。
このように、マウント状況は生まれやすく、ぐるぐる回っているとも言えます。一人が言うと、それは形や対象、人を変えてどんどん蔓延してしまうのかもしれません。少なくとも、自分が言わないのが正解かもしれません。
そして、知識と経験の二刀流で支援の道を切り開くのが、何よりもカッコいいと私は思います!自分がマウントを取る暇もないし、逆にマウントを取られる隙もないのです。
職員の性質について
最後に、マウント状況を作りやすい職員の性質について触れます。とはいっても、これは多くの福祉職員が潜在的に持っているもの(または過去に持っていた要素)かもしれません。
それは、一言でいうと『誰かの役に立ちたい』という気持ちです。それは、もちろん大事な気持ちですし、誰かの役にたった瞬間、この仕事をしていてよかったなと感じたことと思います。
しかし、その気持ちの中に、ほんの少し、『誰かの優位に立ちたい』という気持ちがあったらどうでしょうか。この二つの気持ちは似て非なるものですが、混在して一人の人の中に含まれている可能性も否定はできないと思うわけです。
これは、お手伝いと支援の違いにも通じます。私たちは利用者さんの生活のお手伝いをすることは間違いないのですが、直接的に手を貸すだけが全てではありません。自立のために支援することとは、手を貸すばかりではないからです。
ただ、そのような職員は育成すると人財に変わる可能性があることも事実です。最初から福祉的に広い視野がある職員ばかりではなく、いろんな人がいることを認めて、育てていくゆとりのある職場、またはきちんとした育成システムのある職場であれば、無用なマウント状況も生まないのではないかと思います。
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