はじめに
今回は、特別支援学校・支援級・普通級の違いについて、福祉のサービスを提供する側から考えていきたいと思います。
もちろん、どの学校が良いかという問題ではなく、『福祉サービスを提供するにあたって』という点を前提とします。
一般的な違いについて
まずは、一般的な特別支援学校・支援級の違いについて解説します。これに関しては、地域差もあることをご理解いただければと思います。
特別支援学校
小中学校圏域より広い地域にある学校です。小学校から高校まで一つの場所にある場合も多いのが特徴です。小学部・中学部・高等部という分け方をされています。スクールバスを運行していることが多く、広い範囲から生徒が集まることも大きな特徴です。
一クラス当たりの人数も少なく(基準は6人)、個々の発達に合わせた支援を展開している印象を持ちます。
福祉サービスの担当者会議にも参加してくださる場合が多く、事業所側ともマメに連携を取ってくれます。
支援級(特別支援学級)
地域の小学校・中学校・高校に置かれますが、すべての学校にあるわけではありません。特別支援学校とは異なり、特別支援学校教員の免許がなくても担任をすることが可能となります。
これが理由かどうかは判断しかねますが、支援の温度差について福祉側と一致しないことも多々感じるところです。
福祉サービスを提供するに当たって
18歳までの就学している場合は、放課後等デイサービスや移動支援、短期入所などが利用できる主なサービスになります。
放課後等デイサービス
基本的には学校に迎えに行くことになりますから、特別支援学校・支援級・普通級の違いは顕著です。まず、特別支援学校は学年ごとの終わる時間がほとんど同じなので送迎がしやすいのですが、支援級・普通級は、例えば6時間授業ですとお迎えの時間が遅くなることもあります。
また、特別支援学校・支援級・普通級と利用者がいる放課後等デイサービスは、学校への送迎が困難という理由で、学年が上がると支援級・普通級の利用を断るケースもあります。来ても、40分くらいしか時間がないという場合もあるので、利用側も利用に躊躇してしまうという声も聞きます。
実際、特別支援学校と支援級で迷われて特別支援学校にした保護者の中には、就労を継続するためには放課後等デイサービスを利用しなければならず、支援級では支援級に迎えに来る事業所自体が少ないという現実から、特別支援学校に決めたという話もあります。
就学相談において、本人の特性や持ち味も加味しつつ、ご家庭の生活イメージに合わせて、現実的な福祉サービスの利用を検討したケースと言えます。
移動支援・短期入所
短期入所・移動支援は、学校による利用のしやすさ、提供について大きな違いは感じられません。
移動支援に関しては、社会に繋がる活動として中高生に人気が高いと感じますが、親以外との外出に慣れるためにも、小学校高学年くらいから準備を進めても良さそうだと感じます。
卒業後の福祉サービスについて
ここでは、主に日中の通所系について考えていきます。どの学校に行っていた生徒さんでも、日中の福祉サービスを利用する可能性があります。生活介護や就労継続支援A型、B型などに通う方が多いと思われます。
ここで、一つ思うことがあるので書き記したいと思います。
学校は、特別支援学校・支援級・普通級と選択肢がありますが、その時々、合った学校に通っていた方の方が、その後の通所施設の適応が早いと思われる、ということです。
もう少し詳しくお話ししますと、極端な例ですが、特別支援学校への通学が適していると思われた生徒であったものの、能力的にかなり無理をして小学校・中学校・そして高校を普通学級で過ごしたとします。
つまり、残念ながら本人にとっては適した環境ではなかったということになりますが、例えば学校卒業後に生活介護事業所などに通所することになった場合、集団生活への適応がなされない可能性があるということを言いたいのです。
そもそも、ご自身に合った環境にいることが極端に少ないので、成長を経て人格や行動様式が形成された18歳以降に、すぐに新しい環境に適応できるとは言い難いと思います。
今まで適した環境・集団にいることができなかった方は、正直なところ接してみるとすぐにわかります。そのため、引き受ける事業所としても、引き受けに躊躇する場合もあります。
大変厳しい物言いになりますが、その時々で通う学校の選択には、慎重にならざるを得ないということになります。
ご家族の想いも尊重しつつ、より本人に適した場所はどこなのか、本人に携わる人たちと検討をしていきたいところです。
福祉と教育の違いはありますが、学校卒業後のイメージを持ちつつ、学生生活を送ることができるように願わずにはいられません。
最後に
今回は、福祉サイドから見た特別支援学校・支援級(特別支援学級)・普通級の違いについて書きました。各学校によってそのとき使うことのできる福祉サービスの提供具合が異なりますので、ご家庭やご本人に合わせて、そして地域の資源を鑑みていきたいところです。
また、何よりも大事なのは合った場所に行くことだと思います。社会性を育むため、ご自身に合った場所で、そのままを受け入れられながら過ごす経験は、学生時代に経験するべき最優先のことだと私は考えます。
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