食にこだわりのある「自閉症の子ども」との関わり

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食にこだわり?偏食?好き嫌い…?

 食べ物の好き嫌い、支援や子育てをしているときに遭遇する場面です。よく観察してみると、その食材自体に苦手がある場合があります。小さな子だとその代表格は「ピーマン」でしょう。また、ある食材の調理法が苦手な場合もあるかと思います。たまごは好きだけど、卵焼きは苦手である、など。

 そんな子どもの好き嫌いの場面に遭遇したときのプチエピソードです。コラム的な感覚でどうぞ。

 ※エピソード自体は15年以上前、個人が特定されないように若干の変化を加えています。

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Aくんの嫌いなもの

 まだ小学生の低学年だったAくん、自閉症で多動なお子さんでした。出会ったときは「偏食の強い子」という申し送りがあり、支援がスタートしました。しかし、彼は「偏食が強い」ではなく、「決まったものしか食べない子」だったのです。

 ご家族も、Aくんが食べる「その唯一のもの」を提供していました。ここでは、「ラーメン」ということにしたいと思います。

 当然施設でもラーメンしか提供していませんでした。「それしか食べない」という呪縛めいたものもあり、その他のものを提供するのに抵抗があったからです。

 施設的には、学校の無い土日祝日の預かりをする場所でした。そのため、お昼は職員の手によるもので、Aくんの利用時にはラーメンを提供するということが暗黙の了解のようになっていました。

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食べる様子から見えること

 さて、そのAくんですが、ラーメンは見事にすべて完食します。その時点では他のものを提供したことはなかったのですが、おやつなどどんなものを出しても見向きもしません。その他、「ラーメンしか食べない」は信憑性が高いと思わせる様子も見られました。

 しかし、ラーメンの中に入っているものはどれも美味しそうに食べるのです。麺はもちろん、チャーシュー、メンマ、ほうれん草、ネギでさえも。ゆでたまごのトッピングは特に好きなようで、大事に食べている様子を見ることができました。(私はそれが好きでした)

 ある日、こっそり野菜たっぷりのタンメンにしたこともあったのですが、それも残さず見事に食べてくれました。

 この時点で、何か特定の食材に苦手意識があるわけではないと私は確信していました。ラーメンを作るという暗黙のルールは崩さず、その時点までに私はいくつか実験をしていました。例えば、ラーメンをあんかけラーメンにすること、普段は付けないもの(例えば白髪ねぎトッピングや海苔のトッピング)に挑戦していましたが、どれもAくんは食べてくれたのです。

 そして、Aくんは調理中の台所をジーっと見てることが好きでした。だから、私は調理の様子を一緒に見せるように作っていました。「今日はこれを入れるよ」と話したり、食材を切った様子を見せたり、ときには一緒に麺を茹でたり。それは楽しい時間でした。

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自閉的な傾向のある方へのアプローチ

 題字のように書くと大げさですが、そのとき私はある一つのことを教えられていました。それは、「自閉症(自閉スペクトラム症)の方は、中身が見えないとそのものを食べない可能性がある」ということです。例えば肉まんやあんまん、これはそのままでは食べ進まない方がおられたのですが、パカッと中身を開けて、入っている物を見せると食べる、というものです。

 その他に、天津飯、ハンバーグなどに、そんな様子が見られました。これは全員がそうではないのでしょうけど、ものすごいヒントが隠されている予感がありました。

 「まるで手品みたいだ」と、当時はそのレベルでの認識だったのですが、いろいろ付き合いを深めていくうちに、自閉スぺクトラム症の認知(知覚)の仕方や、特性上感じてしまう不安感の存在をおぼろげながら知ることになりました。

 その中で、今思うことは、様々な理論や考え方があるけれど、現場レベルでできることは「可能な限りの細分化」とそれに伴う「(本人が)納得できる丁寧な説明」がセットになっていることだと私は思っているということです。これは食についてだけでなく、生活全般そうだと思っています。

 例えば肉まんやあんまんを食べなかったのは、未知のものに対する不安感(食べ物なのかどうか分からない可能性も疑う)と、なぜそれ(その食べ物)がそこに存在するかその過程が分からなかったことが原因ではないか、ということです。

 つまり、「好き嫌い」とされていた状態の中には、そのような原因があった可能性も否定できないと思うわけです。

 あとは、上記のAくんの場合のように、「ラーメンなら食べる」という気持ちから、ラーメンだけを提供することでAくんはもっとラーメンに固執してしまうということです。
 
 これは、人間の行動としてあり得ることですし、保護者の気持ちとしては「何とかして食べてほしい」という気持ちがあることは否定できません。施設としても、「食べませんでした」が続くより「食べました」と報告したいものです。

 確かに、Aくんは「ラーメンしか食べない」という事実があったかもしれません。ただ、それはある一定の時点での出来事で、ひょっとしたら変わっていた可能性もあったでしょう。

もう少し続きます。

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大批判を受けながら

 さて、私はAくんとの付き合いを深めながらある確信を持ちつつありました。それは、「Aくんはラーメン以外も食べる」というものです。そう、具材はどれも残さず食べることから、①食材に対しての抵抗は恐らくない、②調理法も(現時点では)ラーメンという形であれば問わない、という仮説を立てました。

 その上で、ラーメン以外の料理に挑戦することとして、①食材の変化の形態や過程がわかりやすく、食べる瞬間に見た目で判断しやすい、②現時点でラーメンの中に入っている食材を可能な限り使うこと、それらを条件としました。

 そして、もっとも大きな問題は、「Aくんはラーメン以外にも食べるであろう」という私の中の確信が揺らがないかどうかでした。正直、勝手に他のものを提供したら他の職員に怒られてしまうこと、保護者からも批判が来るかもしれないこと。それを押してでも挑戦したいのか…そもそもAくんは望んでいるのか。

 ある日Aくんに問うと、ニコッと笑うのみでした。それで決めました。「一緒に作ってみよう!」と。私はこの瞬間自信を持ちました。「Aくんはラーメン以外にも食べたいものがあるはず」だと。

その後しばらく考えて、Aくんと一緒に食べる料理を「サンドイッチ」と決めました。

 理由は、①たまご、チャーシュー(ハム)など、今ラーメンで食べているものを取り入れやすいこと。②一緒に作ることができること、③重ねていく過程がわかりやすいことと、断面を見ると、食べるときに見た目で何が入っているかわかること、です。

 サンドイッチを作ることを他の職員に告げたら大批判でした。「食に対する嫌悪感がついて、ラーメンも拒否したらどう責任を取るんだ」と言われました。別に無理に食べさせるわけでもない…と思いましたが、それはしばらく言われました。「食べなかったときに、代替えでラーメンは用意するのか」という問いに、私はノーと答えました。それはAくんに見透かされてしまう、もっとも悪手のように感じました。

 もちろん、保護者にも伝えました。一言、「一食食べなくてもいいわね」と笑ってくれました。「ホントは色々食べると良いんだけど」とも言っていました。

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サンドイッチ作りの日

 その日は買い物からAくんと一緒に行きました。今日は「ラーメンを作らないこと」「サンドイッチに必要なもの」を十分に説明し、買い物を進め、調理に入りました。ほぼ全工程を一緒に行い、本人にわかるような説明を加えて、本人がパンの上にトッピングをしました。

 さて、出来上がったサンドイッチ!Aくんは3分ほどジーっと見つめて、そのあと周りを見て(!)、みんな食べていることを確認し、そのあと食べるのはほんの一瞬でした。「あれ、食べちゃったの?いつの間に?」というレベルでした。

 そう、Aくんはサンドイッチを食べたのです。

 これにはみんなビックリ、批判をしていた職員も驚きを隠せない様子でした。

 そして、その職員は一言…「Aくんもこういう機会を待っていたのかもね」と。

 まだ若かった私は、その言葉が全てで、たまたま私自身が無知なこともあって、そういう挑戦に結びついただけなんだと思いました。この感覚は、経験を重ねると忘れちゃう類のものかもしれない…だから、若い人や新しい感覚を受け入れる柔軟さを持った人にならなきゃなぁと思ったのでした。(今なれているかどうかはわかりませんが…)

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最後に

 長くなってしまいましたが、思い出しながら楽しく書くことができました。好き嫌いの理由はきっと様々で、ひょっとしたらほんの少しの理由が原因かもしれません。そして、食だけではなく、我々の思い込み(こうあるべき、こうでないと)が、支援に関しての一番の壁になっていることも十分にあり得ることと思っています。

 そういった意味合いで、新しい風や新しい考えを柔軟に受け止めることができるようなサービス提供事業所…思い切って窓を開けることができる事業所は、いざとなったら強いですね。もちろん、悪い空気を感じたらすぐに窓を閉じることができる判断力と行動力も必要です。

 それでは、最後までどうもありがとうございました!


支援力をつける人財★
ケニー

福祉事業所にて、療育、生活支援、余暇支援など直接支援や、相談支援専門員など相談職の経験を積み、現在も福祉に携わっています。その過程で2校の通信専門学校へ通い、福祉の資格取得もしてきました。仕事と家庭生活の両立を目指しています。

また、複数の法人立ち上げの経験から、福祉職としての働き方や組織作りにも積極的に取り組んでいます。

ブログでは、資格取得の道のりや勉強のノウハウ、そして福祉職として働いていくためのマインドを発信しています!
勉強のちょっとした小技や役に立つこと、その他実際に私が体験したことなどをお伝えしていきます。

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