年末に、相次いで残念なニュースが飛び込んできました。今回は、このニュースを受けて、福祉の給付金を不正請求する背景について、考えてみたいと思います。
(概要)給付金を得るため、本来配置すべき人員配置基準を満たしていないということで、京都府、堺市それぞれが府内、市内の放課後等デイサービス事業所に対して事業取り消し処分をおこなった。
ニュースより抜粋(京都府・堺市のケースは別ケース)
ちょこちょこ聞く話だわねぇ…。
不正請求の発覚は今後も増えていく
放課後等デイサービスの不正請求は、氷山の一角だと思います。今後は、このようなニュースがもっと明るみになってくるでしょう。放課後等デイサービス事業がはじまったのは平成24年。ニーズがあるということで、爆発的に数が増えてきました。体制が整わないまま、見切り発車でスタートした事業所も数多くあるでしょう。勤怠管理、職員配置など、ずさんな管理がされていることも想像できます。したがいまして、今後も同様の事件は増えてくると予想します。
しかし、この件は悪質かどうかが重要視されます。再三の指導にも応じなかった事業所、明らかに不自然な職員配置や請求をしてしまう事業所。請求のミスは誰にでもあり得ますが、そうではなく、悪意を持って確信的におこなっていたかどうか、焦点になってくると思います。
なぜ、不正請求をしてしまうのか?
放課後等デイサービスが爆発的に増えた背景に、新規事業者の参入が挙げられます。もちろん、それは困った児童や家族を救うために必要なことでした。しかし、一定数志の低い人たちへ門戸が開かれる結果にもなったのです。その人たちは、『放課後等デイサービスは儲かる』という文言に釣られ参入しているため、基本的に売り上げ主義です。それは悪いことではないのですが、福祉の事業はただやっているだけでは設けに繋がらない事業なのです。それに気が付くことができないと、設けを出す方法として『不正請求』しか考えられなくなるというわけです。
福祉事業の仕組み ~利益を出すには?~
福祉は準市場と呼ばれています。これは、政府が決めた枠組みや報酬の中で、それぞれの事業者を競争させて、市場を発展させていくものです。つまり、売れば売るほど儲かるようなものではなく、受け取る報酬には、その枠組みの中で限度があります。この仕組みを、まずは知ることです。
さて、それではこの『限度のある報酬』をより多く手にするためにはどうしたらいいのか。一番に思い付くのは、サービス残業含む人件費のカットでしょう。しかし、それでは事業所の運営が成り立ちません。職員が定着しないからです。次に思いつくのは、可能な限り、受給できる報酬をもらうように体制を整えることです。放課後等デイサービス含め福祉事業は、ある資格者保持者などを一定数配置することで、通常もらえる報酬より高額になる加算が設けられています。この部分が、今回もそうなのですが、不正請求の温床となっているところです。
大抵の事業所は、この『加算』の部分で利益を出そうと思っているでしょう。ただ、先ほど書いたような準市場の原理では、当然利益の天井があるわけです。すると、今度は加算の不正と、人件費のカット(職員の架空在籍など)のコンボをしてしまうのです。
それじゃ、利益を出すための工夫ってなんでしょ?
地域性もありますが、一貫性のある事業展開をすることで利用者離れを防ぐこと、福祉サービスだけではない収益事業の展開をすることです。また、自費サービスなどの展開もいいかもしれません。
福祉サービスというきっかけを手に、その地域で求められる事業(関連事業でもいいし、福祉的就労の場をサービス外で作るなども面白そうです)を展開していくことで、収益を上げていくのです。そのために、地域に根づいていくこと、核となる職員を育成していくことが必要です。中長期的な目線を持っていくことがカギとなると思います。
短絡的に儲けようとするのはダメね!
信用も失ってしまいますからね。
不正請求の発覚について
今回は、実地指導による発覚と、内部告発によるものでした。どちらもあり得るケースなのですが、内部告発の場合は内部の人間関係のパワーバランスも関係があると思われます。つまり、権力争いなどが告発を促進させしまうということです。(悪いことは告発するべきなのですが)
今回、内部告発で不正が発覚した事業者は、多岐にわたる福祉事業を展開しているNPOでした。一方、実地指導で発覚した事業者は、放課後等デイサービスのみ立て続けに三か所出したようなところなので、付け焼刃なところがあったのでしょう。内部告発が行われた事業所は、とても立派な施設で、事業展開もしっかりされているという印象を持ちました。
そこで、私の疑問…
身内経営じゃないかなぁ?
トップの苗字の同じ人が、たまたま現場にも居ただけだわね…たぶん。
今後の不正請求発覚について
冒頭にも述べたように、今後も放課後等デイサービスの不正請求は明るみになってくると思います。今後増えてくるケースとしては、『事業を廃止した事業所に対する給付費の返還命令』と予想します。いわゆる、『貰うだけもらって、やり逃げケース』への対処もするだろうということです。給付費の請求は遡り2年、返還は5年間です。つまり、事業を廃止しても、5年間は不正による返還の義務があるのです。
今回はここまで!不正請求じゃなく、利益を出すような工夫をしたいところです。逆に言うと、短絡的な思考では福祉業は務まりません。
いい加減なところは早く淘汰されるといいわね!
コメント