障害福祉・介護の現場で、効果的なアセスメントをするために

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支援力をつける人財

 今回は『アセスメント』について考えていきたいと思います。日頃からよく聞く言葉である『アセスメント』ですが、なんとなく用いている一面はないでしょうか?

 この機会に、日々おこなっているアセスメントを見直し、一緒にアセスメント力を上げてみませんか?

はじめに

 障害福祉・介護の現場では当たり前に用いられるアセスメントという言葉、今回はこれに特化して考えていきます。

 本記事では、まず障害福祉・介護領域でのアセスメントの定義をさらって、そのあとアセスメント時に重要となる視点について、ケースごとに考えていきたいと思います。

 私自身は障害福祉分野の人間ですので、障害福祉施設でのケースを取り上げて、その中でどんなアセスメントが必要なのか考えていきます。

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障害福祉・介護用語としてのアセスメントを知ろう

 アセスメントとは、簡単に言うとサービス提供前の情報取集のことを指します。利用者にどんな困りごとがあるのか、どんな支援が必要だと思っているのか、聞き取りを中心としたものとなります。

 もちろん、利用者の現在持っている残存能力(残された力)を確認したり、本人以外の家族に意向を確認したりする過程も含まれます。

 アセスメントツールとして確立された、『本人の状態像を把握する』ためのものを活用することもありますが、ここでは『本人、家族からのあらゆる情報収集』というところにスポットを当てて考えていきます。

 施設などのサービス提供事業者としては、ケアマネや相談支援専門員から利用者についてアセスメントした書類をもらうこともありますし、独自にその利用に関わる部分のアセスメントを取ることもあります。

 また、現場職員としては、その日に利用者とお会いした瞬間に、その日そのときのアセスメントをしていると言っても過言ではありません

 したがいまして、アセスメント自体は特殊なことではなく、日々の支援の中に溶け込んでいて、我々は『アセスメント』として意識していないことも含まれると私は考えます。

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アセスメント時に重要となる視点

 アセスメント時には、どんなことに留意すればいいでしょうか。もちろん、利用者の困りごとや求めていることを引き出し支援に繋げるということは大前提となります。しかし、それだけではアセスメント力を上げることはできません。

 結論から言うと、アセスメントをより効果的なものにするために必要な視点は、『徹底的な疑い深さ』だと私は思っています。『疑い深さ』というとなんだか悪いような気持ちもしますが、真偽を判断する疑い深さではなく、その裏にある本当に気持ちを知ることで、支援の質もグンと上がると思うからなのです。

 この『疑い深さ』の部分は、次のセンテンスでケースと一緒に見ていきます。

 その他に、アセスメントを効果的にする要素としては、以下のことが考えられます。まずは、ここを押さえていきましょう。

①利用者とのコミュニケーション方法

 言葉でのコミュニケーションが難しい方、または言葉だけではなかなか真意がわからない方もおられます。したがいまして、言葉の関わりもしつつ、言葉以外の関わり(非言語コミュニケーション)も重視したいところです。

 声のトーン、表情、目線、その他顔色なども重要な要素です。これらに違和感を覚えたら、ひょっとしたらアセスメントとしてはまだまだ掘り下げる余地があるのかもしれません。

 また、障害福祉分野では意思の疎通が難しい方もおられます。一方的に決めつけるのではなく、その人なりのコミュニケーション方法を模索していく努力も必要だと思います。伝え方の工夫など、大事になる部分でしょう。

②本人と関わる人たちとの良好な関係作り

 当たり前のことですが、これも必要な要素です。本人のことをよく知るために、家族や他の事業所など、本人と関わる人たちとの関係も欠かせません。しかし、ここでは一歩進めて考えていきたいところです。良好な関係を作る=信頼関係を構築していくということになりますが、これとアセスメント力はまだ別物だと思います。

 本人のことをよく知るため、良い支援に結びつけるためにアセスメントをするわけですが、それは一方的なものではありません。つまり、お互いに『アセスメントをし合っている』とも言えるのです。

 効果的なアセスメントは、今現在おこなっている支援や悩み、どんなことが知りたいのかを、相手にアセスメントしてもらうことで引き出すことができるとも言えます。今こちらが持っているカードを、上手に見せる必要があるということです。

 そして、それは良好な関係との相互作用により、効果的なアセスメントに繋がると思います。

③アセスメントをチームで検討すること

 これも当たり前のことですが、やはり一歩進めて考えていきたいところです。利用者本人・家族・関わる人たちから、本人のアセスメントを取った次の段階です。

 相談支援専門員やケアマネジャーであれば、計画として落とし込む前の事業所内での検討、施設職員であれば実際の支援に入る前の支援方法についての検討の段階となります。

 つまり、材料をどう料理するかという段階で必要なこととなります。このセンテンスの冒頭で述べた『疑い深さ』も関連しますが、ここでは思いつく限りの仮説を立ててみたいと思います。

 アセスメントを実際の支援に生かすため検討が必要なのですが、この検討の方法はただ妥当な線を検討するのではなく、考えられる仮説を考える場にしたらどうでしょうか。すると、得たアセスメントに疑問が生じることもあると思います。その場合は、再アセスメントが必要になるかもしれません。

 もちろん、再アセスメントが必要だと思ったことは無駄なことではなく、よりよい支援に繋げるための確認であり、再アセスメント自体がアセスメントの過程に含まれているという考えでいいと思います。効果的なアセスメントは、アセスメントをどう捉えていくかも大事な要素です。


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各ケースからアセスメントを考える

 ここからは、今ある状況に関して、いい意味で疑って考えてみることの必要さをケースから紐解きます。もう一度言いますが、『アセスメントとはいい意味での疑い深さ』です。それでは、さっそくいってみましょう。

①現場支援のアセスメントから

利用者の意思や希望から紐解くアセスメント

 このケースは、本人を支援するために本人やご家族に施設職員としてアセスメントをする場合を想定しています。

 生活介護事業所に通う男性の利用者。本人との意思の疎通は難しい状況のため、相談員や家族から情報提供がありました。その中で、『排せつは紙パンツでおこなう』というものがありました。

 施設から家族へのアセスメント時にも同様の答えだったため、支援時には紙パンツを用いることとなりました。しかし、本人の紙パンツへの拒否が強く、職員も困ってしまいました。家族に再度聞いても『紙パンツじゃなければダメ』ということでお手上げ状態。ケース会議となりました。

 施設のケース会議では、『どうすれば紙パンツを着用できるか』ではなく、『紙パンツを嫌がる理由があるのではないか』という話も挙がりました。前後して、本人が紙パンツではなく便器での排せつをしている場面も目撃されるようになりました。

 このことを念頭に、①本人は紙パンツではなくても排せつができる、②紙パンツにするのは本人の意思ではないのではないか、という結論がでました。それを元に、家族へ再アセスメントを試みたところ、新たな事実がわかりまりた。

 それは、『便器での排せつも可能であるが、パンツやズボンが濡れてしまうと本人がパニックになってしまう』というものでした。つまり、家族としては『パニックを避けるために紙パンツ着用をお願いしていた』という事実があったのです。

 この事実により、現場の支援方法も変化しました。紙パンツでの排せつではなく、パンツでの排せつをしながら、失敗がないような手立てを考えることになったのです。与えられた情報を、別の角度で見ることも必要だというケースです。

②相談の現場のアセスメントから

家族が代弁する本人の様子から紐解くアセスメント

 このケースは、相談支援専門員としてのアセスメントを想定しています。障害児童の支援計画を立てるため、保護者に聞き取りをしました。その際に挙がったのは、『本人はとにかく外が好きで、遊びに出かけたい』という要望でした。

 確かに多動で元気の有り余っているお子さんだったので、相談員は週末は移動支援として余暇活動を組み込むプランを作成して、サービス利用もはじまりました。しばらくすると、保護者から『もっと週末の利用をしたい』という要望が出てきました。

 そのことをサービス提供事業者に伝えると、また別の話を聴くことができました。それは、『本人は外出を楽しんでいる様子があまり見られない』というものでした。そのことを保護者にそれとなく聴くと、『慣れていないだけ』ということで、頻度を増やしての継続利用となりました。

 結論から言うと、このケースでは当初に挙げられた『とにかく外が大好き』という子どもの状況が誤りでした。詳しく言うと、『ご家族が本人とどう関わっていいのかわからず、家庭の中に居場所がなかった』というケースだったのです。

 この事実は、サービス提供事業所の職員が、ふと漏れた保護者の話から深く探ることに繋がったものです。つまり、相談員とはそこまでの信頼関係を築くことができなかったとも言えます。また、相談員自体もチームで検討するという視点がなかったため、自己完結してしまったということにもなります。

 ここでも、いい意味で前提を疑うことと、本人の様子から深く探る必要性があったと思います。

 話は少し異なりますが、ケアマネや相談員は、『サービス提供が家族の持つ機能を奪うことがないよう、調整をしていく必要がある』と思います。そういった意味合いで、相談員のアセスメント力ももっともっと問われてくるでしょう。

③職員同士のアセスメントから

職員の見立てによるアセスメント

 最後に、職員同士がアセスメントを元に話し合い、支援を決定していくケースです。

 視力が悪く、あまりものが見えていないという利用者の食事介助の場面でした。職員はこの利用者の隣に座り、次に食べるものを手渡すという支援をしていました。もう何年もずっとそうしてきたので、その光景が当たり前になっていました。誰も疑問に思わなかったのです。

 引継ぎ時にもそのような説明がされていました。しかし、家庭では本人にあった提示方法により、食事に関しては自立していました。

 この場合は家族へのアセスメント不足と、職員同士の支援に関しての先入観から、アセスメント結果が歪められてしまったのかもしれません。

※以上3つのケースに関しては、事実を少し変えて紹介させてもらいました。

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本記事のまとめ

 本記事ではアセスメントについて考えてみました。アセスメントとは、ある立場の人のみがおこなうものではなく、日常的に現場に溢れているもので、判断の連続の材料となるものです。

 聞き取ったこと、得られた結果などをそのままの解釈でサービスに落とし込むことも必要なことですが、考えられるだけの仮説を立て、いい意味で疑ってみる視点も大事だと思っています。

 アセスメント力について、もう一度考えるきっかけになると幸いです。

今回はアセスメントのお話でした!アセスメント力=観察力ですね。

支援力をつける人財
ケニー

福祉事業所にて、療育、生活支援、余暇支援など直接支援や、相談支援専門員など相談職の経験を積み、現在も福祉に携わっています。その過程で2校の通信専門学校へ通い、福祉の資格取得もしてきました。仕事と家庭生活の両立を目指しています。

また、複数の法人立ち上げの経験から、福祉職としての働き方や組織作りにも積極的に取り組んでいます。

ブログでは、資格取得の道のりや勉強のノウハウ、そして福祉職として働いていくためのマインドを発信しています!
勉強のちょっとした小技や役に立つこと、その他実際に私が体験したことなどをお伝えしていきます。

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