2022年一本目のブログ、は表題のとおり「公認心理師を所得して、福祉職から心理職を目指した自分の忘備録」として書いていきたいと思います。
私自身は、第三回の公認心理師試験に合格し、それを生かす手段を探していたという状況です。その中で感じた困難さや、感じたことを書き記します。
参考までに、自分自身は障害福祉の分野で施設(生活介護、就労継続支援、放課後等デイ)の管理者・支援員や相談支援専門員(少しだけ介護支援専門員も)を経て、今は障害福祉サービスを提供する会社の代表をやっているところです。2022年時点では40代、24歳の時から障害福祉の分野で仕事をしています。
所持資格は取得した順に介護福祉士、介護支援専門員(現在は失効)、社会福祉士、精神保健福祉士、保育士、公認心理師、となります。大学では心理学を専攻していたのですが、その中で自閉症の支援に興味を持ち、福祉施設の支援員になったという経緯があります。
介助や関りもあまり上手ではなく、仕事する上での武器が足りないという気づきから、配属されたサービス事業に伴って勉強を進め、異動するたびに資格取得をしてきました。その中で、公認心理師は元々は心理学を専攻としていた自分にとっては、20年越しの伏線回収的な意味合いもあり、「資格を生かしたい」という気持ちを強く持つきっかけにもなったのでした。
心理職~求人の難しさ~
さて、そんなこんなで公認心理師を取得したわけですが、日々の支援業務には役に立つ場面はたくさんあるものの、「心理職」としたのそれではないのが不満でした。そこで、思い切って心理職として働いてみよう!と思ったのです。
しかし、現状で仕事として福祉サービス事業の代表やそれに伴う支援職を辞めるわけにもいかず、週に1~2回の非常勤職員として探し始めました。
ところが、これがまたなかなか見つからないわけです。今まで私の行ってきた仕事や自分自身の適正から、スクールカウンセラーに狙いを定めて募集を見ましたが、非常に狭き門。都道府県単位で募集しているものと、市町村単位で募集しているものがあるようで、後者を狙っていましたがタイミングが合わず、でした。
少し話は変わりますが、「公認心理師」としての募集は数多くあるのです。求人サイトで検索するとたくさん出てきますが、その多くは障害児通所支援の放課後等デイサービスの求人です。これは、公認心理師が特別な加算として算定できることから、求人として多く出ているものと思われます。
作業療法士、理学療法士、言語聴覚士も特別な加算の対象として挙げられていますが、特に公認心理師に求人が集中している印象を覚えます。これは、福祉職から心理職へ転身を考える方を狙っての効果かなと予想しています。
確かに、事業所としては加算が取れると大きいです。ただ、その業務内容は「心理職」としてより、「児童の支援」という面が多いであろうことから、私が探していた求人としては異なるものと思い最初から検討から外していました。
もちろん、アセスメント、支援で心理的支援が必要な面も多々あることから、放課後等デイサービスで心理職として働くという選択肢もなくもないのですが、支援員としてではなく、明確に「心理職」としてその現場での働きが期待されて(確保されて)いないとなると、自分の事業所でやったほうがいいかな、なんて思ったことも事実でした。(うちの会社では、居宅介護、相談支援事業所、放課後等デイを展開しています)
なお、2022年時点で、私がサービス提供を展開している自治体での加算の要件は、公認心理師が必須ではなく、「大学で心理学部を卒業したこと」で良いそうです。
応募や面接を経て…不採用が続く!
求人を見ること3ヵ月、やっと条件に合うところが見つかりました。それは、①週に1~2回の勤務で働くことができること、②心理職としての採用であること、③福祉の分野ではないこと、です。③に関しては、どこをどうもってその定義にするか微妙なところではありますが、簡単に言うと上記のように「放課後等デイサービス」などではない、ということです。せっかくの機会なので、福祉以外の分野で心理職として働いてみたと思っていたからです。
履歴書を送り、面接へ。結果としては不採用でした。「経歴としても、資格としても十分であるが、発達検査ができることが条件で、即戦力を求めていたから」ということでした。散々言われているように、臨床心理士ではなく、公認心理師のみの取得者が発達検査を実施できることはほぼないと思われます。専門的な勉強、実践を経てのそれは、資格取得しただけでできるものではありません。
これじゃ、どこも採用は厳しいのではないかと思い、いくつか発達検査などの研修を受講してみたものの、「会得するのはすぐには難しい」という結論に至り、同時にまた求人を探すこととなりました。
心理職としての求人を探すにあたり、「検査の実施者となれるかどうか」は面接時にもれなく聞かれる項目でしたので、重要視されているのは間違いなさそうです。心理職としての力量を図る質問であると同時に、「公認心理師」としての資質や属性を試されているようにも感じました。
そんなわけで、面接しては不採用が続き、心も折れかけていた頃、やっと採用が決まったのでした。上記①~③を満たし、私としてはこれ以上ないくらい好条件で、働てみたいと思っていた場所だったので、拾ってもらえてただただ感謝でした。
福祉職から心理職へ
そして、心理職としての勤務が始まりました。詳しい勤務内容は諸々あるので避けますが、私としては、相談支援専門員やケアマネをしていた経験から、相談職と今回私が採用された心理職は近い関係にあると思い、業務内容も親和性が高いと思っていました。
しかし、それは大きな間違いでした。本人の状態や希望を知り、それをサービスに結び付けていく相談支援専門員とは違い、結びつけるものがない状態での「見立て」は非常に難しかった、ということです。
これに関しての言語化は非常に難しく、相談支援専門員だって「見立てが重要」であることは間違いではないのですが、ゴール(サービス提供)がある見合てと、ゴールがない見立ては別物ということでしょうか。少なくとも、私の感じる範囲ではそう思ったのです。
以下に記事を貼りましたが、その記事の中で紹介している他の記事も、過去の記事ながらわりと上手く書いているなと思ったのでご紹介しています。もしよかったら、ご覧ください。
今までの経験は役に立ったのかどうか
結論から言うと、「ほとんど生かす場面はないだろう」ということです。例えば、私のアイデンティティは「ソーシャルワーカーであること」なのですが、傾聴や受容的な態度はもちろん大事として、それと「心理的な側面からの本人の見立て」は別問題ということです。
信頼関係を作り、傾聴を重ね、丁寧に聞き取ったアセスメントから、本人や家族の問題や課題を知り、福祉サービスに結び付ける…相談支援専門員の仕事の重要な部分です。そのために、相談支援専門員に限って言えば、純粋な相談職というより現場との折衷的な支援スタイルの方が多いような気がしています。(そして、そうでないと難しい場面も多々あるものと思います。現行の制度上においては)この辺りは、相談職に介護経験は必要かどうかという記事をご覧ください。
福祉職の私が、心理相談で「現場」を感じた話
最後の話です。福祉でいうと、「現場」は「介護や直接支援」を指すことが多く、利用者支援という面では、実際はそう大きな違いはないと認識していますが、いわゆる相談職と現場職には大きな隔たりや壁があると思いがちです。
今回、心理職として採用され、複数回心理面談に同席して感じたことは、「これは現場だ!」という新しい感覚でした。恐らく、この感覚は福祉職だけをしていたら得られなかった感覚だと思っています。これも言語化は非常に難しいのですが、一発勝負の心理面談に臨むまでの心構え、時間の流れ、意識など、これ以上ないくらい「現場」を感じたことが事実です。
それは、相談支援専門員や介護支援専門員をしていたとき、「これも現場の一つだ」と思っていた感覚とは異なるものでした。
まとめ
生粋の福祉職である私が、公認心理師取得をきっかけに心理職を目指した話でした。
①採用は心理職として選んでいくと、非常に難しいこと
②今までの経験は、あまり役に立たなかったこと(潜在的には生きているはずですが)
③ゼロベースで見立てをおこなうことの難しさを感じたこと
④心理相談、めっちゃ現場感あるじゃん!
⑤臨床心理士さん、やっぱ強い!すごい!
そんな風に考えると、「連携」が強調、または得意とされている「公認心理師」の活躍の場はまだ少ないともいえるかもしれません。この採用の過程のある面接で質問された、「あなたは自分のことをどう思いますか」に対して、「ソーシャルワーカーとしての側面が強いです」と即答したことからも、今の現場で「シンリシ」と名乗ることに一瞬の躊躇があることも事実です。そんな思いを秘めて、もう少し心理職としての経験を積んでいきたいと思っています。
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