はじめに
今回は、特別支援学校卒業後の進路としての『生活介護事業所』について、少しじっくりと考えていきたいと思います。
この生活介護事業所は、18歳以上の知的発達・身体・精神に障害のある方が日中通う福祉施設として、障害者総合支援法に定められています。そして、特別支援学校に通う方の卒業後の進路の一つとして選ばれることもあります。
他の選択肢としては、一般就職や就労系(就労移行支援、A型、B型)のサービスなどが考えられると思いますが、その中で生活介護の位置づけはどのようなものでしょうか。
それでは、見ていきましょう。
『生活介護』のイメージ
生活介護という言葉から、どのようなイメージをされるでしょうか。
パッと感じる部分ですと、やはり『介護』という言葉が引っかかるのではないかと想像します。
そして、その言葉から、『身体の介護が必要な方が通われる』というイメージになるかと思います。
もう少し極端ですと、『寝たきりの方を介護する施設』という印象を持たれるかもしれません。
実際に私が生活介護事業所にいたときも、進路相談ではそのような質問が多かった記憶があります。そのときの答えとしては、『必ずしもそうではないので、気になるところは実際に見てみてください』としていました。今も、その答えは変わりません。
それだけ、生活介護事業所は、その事業所のカラーや対象とする利用者で大きく異なるのです。言葉だけのイメージでは、絶対に読み取ることができない部分だと思います。
生活介護の活動内容については以下の記事をご覧ください。
進路としての選びにくさ
さて、冒頭にも述べたように、生活介護事業所は特別支援学校を卒業した方の進路先として選ばれることがあります。しかし、同時に選びにくさもあると感じています。それは、先にも書いたようなイメージの問題があるからです。
具体的には、特別支援学校通学中の保護者の立場からすると、『うちの子に介護は必要ない』というところです。身辺自立がおおむねできているお子さんの保護者の中には、そのような意見を持つ方もおられます。
もちろん、間違った意見ではないのですが、事業所選びの中で最初から『生活介護事業所』を除してしまうのは、もったいないと私は思います。
もう一つには、就労系のサービスへ進むことが、特別支援学校卒業後の進路として適しているという、学校や保護者の中にある言葉にならない気持ちだと思います。
特別支援学校に通う生徒で卒後に一般就労をする方もおられますが、一番の成功は『一般就職』で、次に『就労系サービス』、最後に『生活介護』となっているように私は感じます。
つまり、小~高等学校の特別支援教育の成果は、就労するか、または就労と名の付くサービスへ結びつけることを目標としているのではないかということです。
進路相談を受ける中で、このような言葉を聞いたことがあります。
『うちは就Bに落ちたから生活介護にします』
『うちの子が受かる就Bはありますか』
生活介護に対するイメージのところでも述べたように、ここでは『就労』という言葉が先行しているように感じます。
就労継続支援B型や就労移行支援、または就労継続支援A型であっても生活介護であっても、福祉のサービスを使って、日中生活を送ることは変わりませません。給付の流れなどは異なりますが、両者に優劣、または差はないというのが私の考えです。
それでは、特別支援学校卒業後の進路で、最も適した場所は何かというと、それは『本人が一番本人らしくいられる場所』に他ならないと思います。
18歳までの支援で大切なこと
さて、特別支援学校に通っている方が18歳で社会に出なければならないのかどうか、という議論は後でするとして、特別支援学校在学中の18歳までに行う、大事な支援について考えていきたいと思います。
それでは、18歳で社会人となるまでに、どんな支援が必要でしょうか。読み書き計算、その他対人コミュニケーション…そんな文言が浮かぶでしょうか。教育としては、そのような面を引き出すような関わりをすることは必要だと思いますし、学校の存在としては正しいようにも思います。
上記の事は、一般就労の場に出るとしても、施設通所になるにしても、ある程度必要なことかもしれません。でも、その持っている能力を高めることだけしていればいいのでしょうか?これは、疑問です。
結論として私が思うことは、18歳までに付けるべきものは、『自分で選択する力』だということです。就労や就労系サービスに結び付けるという視点ではなく、自分で自分の道を選択する力を付けるための教育であり、療育であるということです。
自分で自信をもって選んだ道は、生活介護であっても就労系であっても誇らしい、そう私は断言します。
事実、自分で進路を選んだ方は、その後の経過も良好であると感じます。反対に、自分の選択が見えず、保護者や学校が先導して選んだ方は、残念ながら馴染まなかった方もおられるように思います。それが、必ずしもすべてではありませんが…。
しかし、この自分で選択する力は、何か物事を諦める力ということではありません。限りある未来を仕方なく選ぶのではなく、たくさんの悩ましい選択肢の中から、そのとき自分が一番だと思うものを選んでもらいたいと思っています。
選択力をつけるための教育であり、療育。目先のスキルアップに捉われることなく、各事業所、そして学校で考えたいところです。
特別支援学校卒業後の進路について思うこと
今まで、特別支援学校卒業後の進路として福祉サービスである生活介護や就労系のサービス、または就職があると触れてきましたが、違和感を覚えられた方もおられると思います。
それは何故かというと、18歳で学校卒業後、社会に出ることが当たり前の前提になっているからです。
具体的に言うと、18歳以降の教育の場、学習の確保の場、または療育の場がほとんどないということです。
通所施設はありますが、大学や専門学校(就労移行支援や職業訓練校が該当するかもしれませんが)に相当するものはないのが現実です。そのような取り組みをされているところもありますが、福祉サービスの枠組みの中ですので、純粋に学びの場としてはないのではないかと思います。
もっと学問について深めたい人、または18歳以上に目覚ましい発達をすると思われる人、様々な人に合わせていくことも、私は特別支援だと思っています。
最後に
生活介護事業所について考えるうちに、少しスケールが大きい話になってしまいました。
生活介護に話を戻すと、介護面という部分は無視できないものの、その介護は必ずしも身体の介護だけではなく、その人の心、社会に繋がる活動、そして人生のサポートという面も含まれているのです。
特別支援学校の卒業後、本人が一番本人らしくいられる進路先が見つかるよう、心より応援しています。
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