はじめに
今回は、コロナウイルスによる影響で変わってしまった、利用者支援について考えてみたいと思います。令和2年7月下旬においても、コロナウイルスは猛威を奮っています。今後も政府による自粛要請などもあるかもしれません。
新しい生活様式についても、だんだんに浸透してきたところではありますが、支援現場とそぐわないところも多々あるところです。
その辺りを、考えていきたいと思います。
マスクの着用について
まずは、マスクです。これは、よく言われているように表情がわかりにくいことが大変に問題です。我々は言葉と合わせて、表情や身振りなど非言語によるメッセージを同時に発信していますが、その非言語のメッセージは、会話や感情の理解に対して非常に大きな割合を占めています。
これは、利用者同士、職員同士でも起こり得ます。マスクを通じての会話、声掛け、支援は、普段のそれに比べて、伝わりは半減しているといっても過言ではありません。
そんな状況の中できることは、可能な範囲で声のトーンに留意してみることや、利用者に対してはイラストや写真など感情の視覚化で自身の気持ちを伝えていくことも有効だと思います。
利用者側からすると、職員の感情がわかりにくいという状態は、不安感を助長させてしまう要素になり得ると思います。実際、これは様々な要因が重なっているとは思いますが、新しい生活様式により、不穏になってしまうパターンもあるかと思います。
また、「マスクをさせる」ことが「支援」と混同しないようにもしたいものです。利用者の中には、感覚過敏やその他の理由でマスクの着用が難しい方もおられます。口酸っぱく、また無理にマスクをさせるようなことがあってはならないと思います。
もちろん、「マスクができないからしょうがない」という視点で語ることでもなく、「その利用者がマスク着用と同じ効果が得られるような方法」を議論の上探したいと私は思います。
それは、距離感の問題だったり、本人や家族へのより効果的な働きかけだったり、代替えの何かかもしれません。白い紙マスクに強い拒否はあった方が、ベージュの布マスクであれば大丈夫だったという例もあります。紐のかけ方が問題だった方もおられると聞きました。
その辺りに、十分留意して支援に入りたいと思います。
対人距離について
人との間隔について、十分な距離を取ること…これは、支援の現場では難しいことです。対人距離を確保することを教えていくことも必要ですが、それも困難な場合が多いかと思います。
結果的に、望まない隔離をしてしまう場面や、好きな人同士が関わりにくいという制限を産んでしまう場合もあります。
これに関しては、各事業所で慎重な議論の上、取り入れていきたいところです。
間違っても、距離の近い利用者同士を引き離すことが「支援」と混同することのないようにしたいものです。
新しい生活様式に伴う必要な制限を意識しつつ、それが過度になると利用者支援ではなくなってしまうことにも留意が必要です。
また、集団活動をすることが困難になってしまったこともあります。歌を歌う、ダンスをするなど、活動として取り入れやすいもののほとんどについて、制限があるのが現状です。これは、今後の様子を見つつ、徐々に取り入れていきたいところです。
さらに、対人距離の制限に伴っては、社会参加がしにくくなったということも挙げられます。例えば買い物体験やお出かけなど、制限が出ていることと思います。
『集団生活の中で社会性を育む』という大きな目標の前で、新しい生活様式は壁になっている印象を感じます。
この辺りは、福祉サービスですべて補おうとするのではなく、児童であれば学校で、成人であれば(難しいかもしれませんが)地域の中で、物理的な対人距離など、「新しい生活様式に可能な限り沿うことができる場所」で育んでいくことも、個人的には今こそねらい目だと思っています。
すべてを、福祉の事業所で請け負わなくてもいいのではないかということです。
最後に
新しい生活様式と障害児・者の支援について考えてみました。これまで支援や活動の中で主として取り組んでいたことについて、制限を受ける形となっています。
これは必要なことだとは思いますが、ただ単に新しい生活様式に合わせるために制限を設けることも、または普段の活動を継続するため裏技的な抜け道を探すこともやや違和感を覚えるところです。
今できることは、職員間で新しい生活様式が利用者支援に与える影響について、各事業所で議論を重ねることだと思います。
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