はじめに
特別支援学校卒業後の「18歳の壁」という言葉を聞いたことがありますでしょうか。これは、保育園卒業後の小1の壁と同じように、家族が就労を継続できるかどうか判断に迫られる年代のことを指しています。
まだ馴染みの薄い用語かもしれませんが、年々18歳以降の支援を求める声が大きくなっているように感じます。その辺りを、紐解いていきたいと思います。
18歳までの支援はどのようなものがあるか
特別支援級、特別支援学校に在籍している生徒は、18歳まで使えることができる福祉サービスとして「放課後等デイサービス」というものがあります。
この放課後等デイサービスは多岐にわたるニーズを請け負っていて、その中に保護者の就労を継続するためのニーズも引き受けていると考えられています。したがって、18歳までの間は、学校から放課後等デイサービスに行くという流れができているので、いわば学童保育のような保護者の就労の保証がなされている現実があります。
実はこの放課後等デイサービス、児童福祉法の管轄の事業のため18歳までなのですが、一部条件を満たすと20歳まで使うことができるサービスでもあります。それは、高校卒業後、さらに学校に属すことです。基本的には学校法人であれば使うことができると認識していますが、現状それは非現実的な部分もあります。
しかし、少ない数ではありますが、そのような方もおられます。順序としては、放課後等デイサービスを使うために進学したわけではなく、進学の結果、たまたまデイを使うことができたという感覚だと思います。
このように、18歳までは学校から放課後等デイサービスを使うという流れがあるので、朝から18時くらいまでは、長期休暇であっても保証ができているのです。
18歳以降の夕方支援の場はあるのか
ところが、高校を卒業すると放課後等デイサービスを使うことができなくなるため、夕方の支援がなくなってしまいます。就職した場合は別ですが、福祉サービスの通所系に進路決めた場合は、送迎含めて16時~16半位帰宅する場合がほとんどだと思います。
これでは、家族が今まで続けていた就労を続けることができません。
その18歳以降の放課後等デイサービスに変わる夕方の居場所ですが、考えられる場所としては日中一時支援、移動支援、地域活動支援センターがあります。しかし、これらは放課後等デイサービスとは違い、地域生活支援事業と呼ばれる市町村に裁量のある事業のため、サービス形態や実施状況がバラバラなところがあります。これでは、夕方の支援は保障されていると言えません。
これに関して、支援の充実が求められているところでありますが、少なくとも平成15年から一貫して変化がないことも事実です。今後も、しばらくの間は変化がないのではないかと予想します。
18歳以降の居場所をつくるために
私はこれに関してずっと考えているのですが、なかなか答えが出ません。先に挙げた日中一時支援は単価が低く事業になりにくい一面があります。移動支援は単価的にはクリアですが、利用の条件や支給時間数に制限があります。地域活動支援センターは市町村でかなり異なるとことがあるので、何とも言えませんが、18歳以降の夕方支援の場所を担っているとは言い難いでしょう。
この支援が不足している部分は、やはり見逃すことはできません。
サービスを創出、または現状のサービスを拡充したりすることはもちろん、18歳までの自立支援の在り方も考えていく必要があると思います。
具体的には、放課後等デイサービスの在り方として、夕方の時間の保証という面と自立支援という面を、年代に応じて比重を考えていくということで、例えば高校生であれば留守番をすることがあってもいいのではないかと思うのです。それを、デイ含め相談支援専門員などが長期目標で設定できるといいかもしれません。要は、18歳以降の在り方について、18歳以前からきちんと考えられるかどうかということです。
その点で、放課後等デイサービスも無責任ではいられないと思います。卒業後終了ではなく、その後の必要な支援を考えていく、その後の姿を想像して支援を展開する姿勢が必要だと私は考えます。
同時に、サービスの拡充を狙った動きもしていきたいところです。これは、各市町村で協議会などがあるかと思いますが、そういったところで各団体、保護者が動いていく必要があると思います。
最後に
18歳以降になると、夕方の支援が急に手薄になります。肌感覚として、当事者以外の周りの人からは「その状態は自己責任」的な空気を感じ、ご家族が悩まれる一面もあると感じています。その結果、家族は就労を諦めたり、他の家族(きょうだいやおじいちゃん、おばあちゃん)に託してしまうこともあります。
そういった誰かに負荷がかかる支援は、本来望ましくないと思っています。
18歳までの間に、本人の可能性を探り、夕方の時間の保証に変わるもの(上記では留守番を例に挙げました)や、行政に訴えていくこと、(これは地域生活支援事業であれば自治体単位で大きく変わる可能性があります)そして、何よりも18歳までの間に多くの支援者に出会うことができる環境を用意したいものです。
そういった意味合いで、一つの場所でサービスを完結させるのではなく、複数の場所でサービスを受けることで、その可能性が顕在化すると私は思います。
お気づきのとおり、複数の場所でサービスを受けられる環境は、18歳までが一番充実しています。
最終的に、そういったことを共有できる相談員さん選びがもっとも大事なことになるかと思います。
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