今回は、以前ツイートした「対人援助は四則計算」を、じっくり解説してみたいと思います。
「対人援助は四則計算」
足し算→本人、家族に必要な支援を考え、必要な部分を補う
引き算→本人の成長に応じて、支援を見直す
割り算→一つの課題を、みんなで考える
掛け算→支援者、立場でそれぞれ異なる上記の計算の解答を持ち寄り、利用者像を膨らませ、立体化!
最後に、確かめ算
私、Twitterはリプライ除く全投稿を140字ぴったりで行っていますが、これは我ながら「140字ぴったりの良作」だと思っていて、気に入っているものの一つです
ツイートの背景
このツイートは、「サービス担当者会議に向かって、各事業所で支援方法を考える」過程を表しました。
ツイートでは分かりやすい言葉だと思ったので「対人援助」という言葉を用いましたが、「援助」という言葉が馴染まないという意見もあると思うので、そのような場合は「対人支援」に置き換えてみてください。どちらでも意味合いは同じです。
常々、いろんな人に関わる福祉の仕事は、絶妙なバランス感覚が必要だと思っていました。そのバランスは、支援の匙加減ともいうもので、利用者が持つ力や今支援できる支援者の持つ力量も鑑みて、自然に流れるように行いたいなと思っていました。
誤解してほしくないところですが、計算しつくして支援をするということではなく、四則計算の概念を支援に落とし込んでみたいということからはじまりました。
それでは、一つ一つ見ていきたいと思います。
足し算
「本人、家族に必要な支援を考え、必要な部分を補う」
ケアマネや相談支援専門員、そして施設などの通所支援においても、アセスメントの部分が足し算に当たります。ここでは、「必要な部分を補う」としていますが、「足りない部分を補う」ではないところが個人的なポイントです。
実は最後まで迷ったところですが、「必要な部分」を見極めるアセスメント力が大事だろうと考えました。「足りない部分」を見つけるより、「必要な部分」を見つける方が何倍も難しいはず。このニュアンスが伝わると嬉しいです。
どうすれば、本人が本人らしく生活できるか。どういった支援を本人は求めているか。家族はどのように思っているか。その辺りをじっくり話し合いたいところです。
割り算
「一つの課題を、みんなで考える」
これは、本人や家族が抱える課題を、一人で抱え込まないように…という思いから考えました。福祉の仕事をしていると、本人や家族の想いに触れる機会が多くあります。
その中に、生活の課題が多く含まれていることから、それを抱え込み過ぎてしまう個人、または事業所があることも推察されます。
それは、一見いいことのように思いますが、抱え込むことはリスクもあります。したがって、私は、できるなら「一つの課題」を「みんなで共有」したいと思っています。いろいろな人が関わることで、その一つの課題に係る支援はもっと良いものになるかもしれません。
そして、「みんなで取り組んでいる」という一体感が、余裕をもった支援に繋がると思っています。
引き算
「本人の成長に応じて、支援を見直す」
実は、この引き算が一番伝えたかったことでした。支援をしていると、良かれと思っての支援が、本人の自立支援の邪魔になってしまうような、本末転倒な場面も多々見受けられます。常に最新の情報にアップデートしていないとならない部分で、柔軟性とも言える部分かもしれません。
それに、現在行っている支援を引き算するためには、本人の力を引き出すような支援をしていなければなりません。そして、ただ単に手を引くだけではなく、「できるようになったこと」や「現状の持つ力」を十分に加味していく必要もあります。
その上で、現在行っている支援をいい意味で疑い、見直し、不要になった支援は無くす判断力が求められます。
さらに言うと、引き算はとても勇気のいることです。利用者である本人との良好な信頼関係がなければ、引き算はできませんから。
したがって、足し算型だけの支援で満足するのではなく、特に引き算ができるような支援チーム、そしてアセスメントが最も大事なのではないかと私は思っています。
掛け算
「支援者、立場でそれぞれ異なる上記の計算の解答を持ち寄り、利用者像を膨らませ、立体化!」
これは、サービス担当者会議、調整会議で話が盛り上がったときを想定しています。事業所ごとに導き出した解答…それも、どれが正しいとかそういうわけではなく、上記で書いたように事業所の職員の支援力や環境、そのときの本人の様子なども鑑みると、まったく違った解答が持ち寄られることでしょう。
単一の事業所の支援では平面だった支援も、複数揃うと立体化するようなイメージです。サービスの切れ目と日常生活は一致せず、サービスに関わらず生活はずっと連続しているからこそ、いろんな顔を知りたいと思います。
施設にいたり、決まった場所でしか本人に接する機会がないと、今その時見せてくれる顔が全てだと思ってしまいます。しかし、そうでないことを知ることで、今行っている支援にも深みがでるものと思います。
例としては、例えば就労系の作業所に行っている利用者は、きっといつも頑張って仕事をしているので、その施設の職員は「一生懸命で頑張り屋さん」の一面を多く知っています。反対に、その方の余暇支援(移動支援など)をしている事業所の職員は、その利用者の「お茶目な一面」を知っているかもしれません。ご家庭では、ひょっとしたらわがままな一面も持ち合わせているかもしれません。
このように、サービスや場所によりいろんな顔を持つことを知ると、今提供しているサービスの意義もより明確になり、いい支援に結びつくものと思います。
最後に、確かめ算
これは、担当者会議や情報交換で得た「立体化された本人像」を、再度その現場で支援する場面です。この時点では、今までと異なる支援方法や対応方法が見えているかもしれません。それを、またその現場の支援チームで話し合い、日々の支援に反映させていきたいところです。
ケアマネジメントや相談支援においては、モニタリングとなるでしょう。
PDCAサイクルと同じで、繰り返し転がっていくものと思います。
四則計算まとめ
さて、いかがでしたでしょうか。140字で足りなかったところを大幅に付け加えての文章で、とても楽しく書かせてもらいました。数学は苦手な方も多いと思いますが、数字というよりも、論理的な思考をする上でとても興味深い学問でもあります。
その中で、小学校で習う親しみのある「四則計算」を例に、福祉の現場で用いる支援の関係を当てはめてみました。
日々おこなっている支援は、足し算でしょうか。それとも引き算でしょうか。割り算は行われているか、掛け算はできていますか?そんなイメージで支援を振り返ってみると、思わぬ発見があるかもしれません。
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