新型コロナ騒動から、放課後等デイサービスの在り方を考える

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今回は、新型コロナ騒動で浮き彫りになった、放課後等デイサービス・学童保育・保育園の問題点について考えていきます。

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新型コロナ騒動と放課後等デイサービス・学童保育

 まずは、放課後等デイサービス(放デイ)の在り方と、今後について考えてみたいと思います。ご存知の方も多いと思いますが、令和2年の3~4月に、コロナウイルスによる影響で放課後等デイサービス・学童保育に大きな動きがありました。

 その影響とは、学校の休業によるものでした。学校休業による影響で、学校に行けなくなった子どもの行き場所として、障害のある児童に関しては放課後等デイサービスが、そして、働く保護者を支える学童保育がその役割を一挙に担うことになったのです。

 各事業所、様々な決断をして事業を運営してきました。そして、その後一旦は学校が再開された地域もありますが、令和2年5月下旬まで休校が続き、6月を目安に分散登校が開始されるということもあり、対応を迫られているところでもあります。

 この騒動でこれまでの問題点も浮き彫りになってきたように思います。その辺りに、焦点を当てて書いていきたいと思います。

放課後等デイサービスと学童保育の違いは?

 まず、放課後等デイサービスについて、どんな事業所か軽く触れたいと思います。一言でいうと、このサービスは、児童福祉法に規定されている障害児のための通所サービスであり、18歳までの児童が対象となっているものです。

 もっとわかりやすく言うと、この言い方は語弊があることを十分に承知した上で、イメージ重視で言うと『障害児に対する学童』または『障害児向けの学習塾』となるでしょう。

 しかし、例えば学童保育(子どもルーム)は就労をしている保護者を支える児童の預かり施設であることに対し、放課後等デイサービスは療育がメインとなっています。

 この『療育』の定義が幅広いものではありますが、単なる障害児の預かりでは給付費はもらえないということも併せて明示されています。そして、前述のとおり、その療育方法は各事業所様々です。

 中には、学習塾のようなところもあるし、運動をメインとしたところもあります。生活支援を基盤に、レクなどお楽しみを療育としているところもあります。とにかく、預かりではなく療育を打ち出さなければならない現状があります。

 それでは、放課後等デイサービスに通うお子さんは、全員が療育を求めていて、実際に適切な療育を受けているのでしょうか?

 答えは、その子どもとご家庭の考え方によるところが大きいということです。実際問題、放課後等デイサービスが保護者の就労を支えている部分も否めません。もちろん、ご家族のレスパイト(休息)を保障している部分もあります。

 もちろん、学童保育がただ単に預かりをしているわけでもなく、子どもに合わせた関わり、遊び、そして子どもの発達に関して専門的な目線がないと務まらない場所でもあります。

 放課後等デイサービスに関しては、通所している以上、事業所としては療育を提供しなければなりませんが、学童保育とは異なり、保護者の利用目的は多岐にわたっているということになります。このことを念頭に入れながら、コロナ騒動が明らかにした放課後等デイサービスの問題を見ていきます。

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コロナ騒動が放デイに突きつけた問題点

 新型コロナの感染が広がり、全国の小中高等学校は休校となる学校が出てきました。もちろん、特別支援学校も同様です。それは令和2年の3月上旬でしたので、通常であれば春休み前の準備期間に充てている時期でした。

 ところが、急遽の学校休校に伴い、放課後等デイサービスは朝からの開所を求められました。多くのデイサービスが慌てて準備を進め、なんとか開所を続けたのが3月だったと思います。

 しかし、4月になっても事態は落ち着きませんでした。学校は休校の延長をし、放課後等デイサービスはそのまま継続するようなニュアンスの行政指導があったところもありました。

 現場としては、家庭の生活を支えるため頑張っていたと思います。しかし、目に見えないウイルスとの闘い、避けてほしいと言われる3密を守れない状態、その他の要素で、様々な疑問が出てきたことも事実でしょう。

 一言で言えば、
なぜ、私たちがこんなに苦労してやらなければならないのか?
 そんな気持ちを、一瞬でも感じてしまった職員も多くいると思います。

 この普段なら感じることのない疑問こそ、新型コロナウイルスが放課後等デイサービスに突き付けた問題だと私は考えます。なぜ、そんな違和感を覚えたのか、それは以下の理由からだと思います。

1 本来は療育施設なのに、預かり施設になってしまっている

2 保護者の就労を支えることへの疑問を感じてしまった
 (罹患のリスクを冒してまで、支える必要があるのか?)

 次のセンテンスでは、これらを詳しく解説し、解決のヒントを考えていきます。

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問題点にクローズアップ

『本来は療育施設なのに、預かり施設になってしまっている』

 この部分に関しては、冒頭にも述べたように、そのような機能は少なくともあり得ると思います。それが、この騒動で表面化してきたのだと予想します。
※現状でも、預かりメインの日中一時支援というものがありますが、地域差があり、あまり広がりはないと思われます。

 我々は療育を提供したいと思ってサービスを組んでいますが、子どもたちや保護者は、居場所のひとつであればいい、と思っているのかもしれません。これは、どちらが悪いという問題ではなく、障害のある児童が通う場所の選択肢の狭さ故、仕方ない部分だと思います。

 つまり、放課後等デイサービスには、様々な役割を期待されているということです。

 別の角度で見てみましょう。放課後等デイサービスは爆発的に増えました。中には、『儲かると聞いたからやってみよう』というマインドの経営者もいるかもしれません。『療育って掲げれば、たくさん利用者が増えるだろう』…そんな考え方も無きにしもあらずです。

 しかし、現場の職員は、常によりよい療育を提供しようと一生懸命です。ところが、経営者はとにかく数を入れようとします。療育と預かりのバランスが取れていればいいのですが、今回みたいな騒動で崩壊すると、『療育ってなんだろう?』という現場職員の考えが出てきてしまいます。

 この辺りは提供する環境も影響します。療育にはある程度適した環境ではありますが、預かりメインとなった瞬間、劣悪な環境になってしまう要素もあるでしょう。例えば、ワンルームの狭い部屋、窓を開けることができない、住宅街であるなど…。職員の疲弊する要素は、そんなところにもあります。

 話を戻すと、療育と預かりに関しては、放課後等デイサービスにすべての役割を担わせるのではなく、療育とレスパイト的な預かりを分けたサービス形態が望ましいと思います。

 もう一つは、放課後等デイサービスの機能が充実しているが故に、サービス利用が家庭の機能を奪ってしまっている側面もあると思います。利用するのが悪いという話ではありません。デイサービス側も『どんどん使ってください』ということではなく、サービス提供をしながら、家庭での利用者支援も併せてしていきたいと思うのです。広い意味合いで、それも立派な療育となるでしょう。

 具体的には、ご家庭の過ごし方、保護者との関係、デイサービスでは見えない部分にこそ着目して、適切な量のサービス提供を心がけたいのです。これは、相談支援専門員の力量も問われる部分です。

 その家庭や、本人にとっての必要以上のサービス提供が、このようなアンバランスな事態を招いてしまったのかもしれません。


『保護者の就労を支えることへの疑問を感じてしまった(罹患のリスクを冒してまで、支える必要があるのか?)』

 次はこちらです。『仕事だから…』と言われると、どうしても受けなければならない気持ちがあります。その反面、『自分たちも仕事なのに…』という考えもよぎります。特に、小さい子どもを抱えた職員は、自らの子どもも預けて出勤しているケースもあるでしょう。ひょっとしたら、家でお留守番をしているかもしれません。

 これらの考えは、職員としては不満になってしまうことも予想されます。何らかの対策をしないと、退職してしまうかもしれません。

 これに関しては、福祉職ならではの自己犠牲の気持ちや、利用者側が持つ福祉施設に対しての印象も大きく関係があると思います。以下の記事をご覧ください。

 併せて、これも一番目の議題と同様ですが、保護者の就労を支えるための場所をつくるのが良いのではないかと思います。支援級のお子さんであれば、学校のルーム(学童)に通うことができるような体制を、支援学校のお子さんは学校内にルームがあればいいのではないかと思います。

 繰り返しになりますが、放課後等デイサービスが預かり(レスパイト)、療育、保護者の就労を支える、この3つの機能を同時に果たすのは非常に難しい問題です。

 今回のコロナ騒動で、放課後等デイサービス含めた福祉施設も、今一度自分たちの在り方を考えるきっかけになったのではないでしょうか?

いかがだったでしょうか。利用する側も、提供する側も、今のサービスについてかんがえるきっかけになると嬉しいです。

働く人財・組織の人財
ケニー

福祉事業所にて、療育、生活支援、余暇支援など直接支援や、相談支援専門員など相談職の経験を積み、現在も福祉に携わっています。その過程で2校の通信専門学校へ通い、福祉の資格取得もしてきました。仕事と家庭生活の両立を目指しています。

また、複数の法人立ち上げの経験から、福祉職としての働き方や組織作りにも積極的に取り組んでいます。

ブログでは、資格取得の道のりや勉強のノウハウ、そして福祉職として働いていくためのマインドを発信しています!
勉強のちょっとした小技や役に立つこと、その他実際に私が体験したことなどをお伝えしていきます。

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コメント

  1. ひなたです。読みました。放課後デイサービスの抱えている多面的な問題を知ることができました。実は放課後デイサービスにはインタビューをしたいと以前から思っていたのです。預かり場でも療育でもそれは意義があるのですが、どう親に子どもに満足してもらってしかも意義あるものにするかは難しいものですね。

    • ケニー ケニー より:

      ひなたさん、ありがとうございます。多面的な問題について、今後のことを考えるための議論が必要だと思います。私でわかることがあるなら、放課後等デイの現状などについてお話ししたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

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