自閉スペクトラム症の利用者に学ぶ、仕事の流儀

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はじめに

 私が福祉の仕事をすることになったきっかけは、学生時代に『自閉症の就労支援』という講義があり、その講義に引き込まれたことがきっかけでした。

 そして、大学時代の4年間のうち半分は、自閉症について研究するゼミの先生に従事しました。

 このことから、福祉の仕事として利用者に関わる視点を持ちながら、その行動様式を研究したい気持ちを持ち合わせていたことも事実でした。

 もちろん、研究と言っても実験をするわけではなく、なぜその発言なのか、そしてなぜそのような行動をするのか…深く追求して知りたいということです。

 今まで、数多くの利用者との出会いがありましたが、どの利用者もたくさんのことを私に教えてくれました

 それは、知らず知らずのうちに、日々の仕事へと落とし込まれていることが多いことにも気が付きました。

 今回は、そんなところを振り返って書いていきたいと思います。

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何かを伝えるときは具体的に!

 利用者さんと施設で軽作業をしていたとき、作業の効率が落ちてきた方がおられました。意思疎通は言葉でできるのでどうしたのか尋ねると、一言『わかりにくい』とそっぽを向かれました。

 これは、私の説明がわかりにくいということだと考え、次の日に自分がどんな説明をしているか、試しに録音をして聞いてみたところ、あることに気がつきました。

 それは、『えーっと』や『あれ』『それ』という言葉が多かったことと、例えば『そのテーブルの二人で』という言葉が多かったことでした。

 なるほど、これじゃ伝わりにくくなってしまうと思った私は、『あれ』『それ』は具体的な物や場所を示すこととし、誰が誰にということも、名前をちゃんと呼ぶことにしました。

 もちろん、一声かけるときも、ちゃんと名前を呼んで話をする体制を作ってからにしました。自閉スペクトラム症の支援では当たり前のことなのですが、自分の言葉の癖はなかなか気がつきませんでした

 その後、『わかりにくさ』はたいぶ解消されたようで、その利用者さんは以前のようなスピーディな作業が戻ってきました。

 このことは、職場間で伝達するときに非常に役に立っています。誰に誰を、どんな風にやってもらうか、具体的に指示をすることで効率も上がってきます。そして、ミスも少なくなります。

 極端な例ですが、私は新人指導においては、新人全員に対して自閉スペクトラム症の支援をするつもりで物を教えたりしています

 新人や、自閉スペクトラム症の方の理解が足りないため、詳しく具体的に教えるということではありません。

 こちらが少し工夫した伝え方をすれば、とてもいい結果が返ってくるということです

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ちょっと待って!ってどれくらい?

 利用者支援において、時間が忙しくバタバタしてしまうことが多々あります。

 つい言ってしまう『ちょっと待って!』という言葉。これも、ちゃんと目安を示さないと混乱を招いてしまうこともあります。

 『ちょっと待って!』から『5分後にスタートします』などに言葉を変えると、利用者の受け取り方もずいぶん違うと感じます。

 この、『ちょっと』もその具体的な時間を示すことで、業務上かなり良い点があると思います。

 まず、相手がいる場合は、目安を示すことで相手を待たせることがなくなる(その時間内で、その相手が別のことをする場合。ただ待たせるのは良くないですね)という点と、自分で言った時間内に、なんとかしようという気持ちが生まれることです。

 私は、利用者支援をする過程で、みんなから時間を有効につかう声掛けの仕方を教えてもらいました

※『ちょっと待って』を多用し、利用者の行動を制限するものではありません。

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仕事は職場で全力で!

 以前、就労支援をしていたとき、退勤後の利用者さんとバス停で一緒になったことがあります。『お疲れさま』と一声かけると、『声をかけないでください』と言われました。

 さっきまではにこやかにお話ししていたのに?次の日、施設でそのことを話すと、その利用者さんは『職場を離れたら他人です』と言いました。

 これに、私は頭を悩ませましたが、それはその通りなのです。場所と人の関係にシビアなその方の考え方は、とても納得がいくものでした。そして、どこからが場所的な他人のラインになるか、その利用者さんと一緒に検討しました。

 その利用者さんは、施設を一歩出た場所が他人のラインだと主張したので、それはそのまま受けとりました。なるほど、場所と人をきっちりわけていてすごい!そんな風に思いました。

 この利用者さんからは、仕事のメリハリを教えてもらいました。帰宅したら、仕事のことから離れること。施設を一歩出たら、帰宅モードになってまた明日仕事を頑張ること。非常に大事なことを教わりました。

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最後に

 仕事の流儀なんて大げさに書きましたが、実はどれも当たり前のことかもしれません

 そういった意味合いでは、自閉的な傾向の方は、その持っている力を発揮する場所さえあれば、きっときっちり物事に取り組むことができるのではないかと思います。

 だから、環境の設定は大事ですし、今は力を発揮できていない環境なのかもしれない、ということです。

 一つ言えることは、私は、今の自分の仕事のスタイルを形成するものを、利用者さんから教えてもらいました。それはなにより、大きな財産となっています。

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ケニー

福祉事業所にて、療育、生活支援、余暇支援など直接支援や、相談支援専門員など相談職の経験を積み、現在も福祉に携わっています。その過程で2校の通信専門学校へ通い、福祉の資格取得もしてきました。仕事と家庭生活の両立を目指しています。

また、複数の法人立ち上げの経験から、福祉職としての働き方や組織作りにも積極的に取り組んでいます。

ブログでは、資格取得の道のりや勉強のノウハウ、そして福祉職として働いていくためのマインドを発信しています!
勉強のちょっとした小技や役に立つこと、その他実際に私が体験したことなどをお伝えしていきます。

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